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T 遊休財産額が制限超過となる理由と考えられる対策

 遊休財産額の制限超過は次の原因が考えられます。
@「公益目的事業」「収益事業等」「法人会計」を問わず、利益が生じて剰余金が蓄積されたとき。公益目的事業会計は、収支相償基準に適合していれば通常過大な剰余金を生じないはずであるが、収益事業等会計及び法人会計においては剰余金が生じうるため、遊休財産額を増加させることがあります。
A予想外の事態により、公益目的事業の費用が縮小したとき。例えば震災の影響により、今まで可能であった公益目的事業の一部を中止しなければならない事態となったときは、その年度の公益目的事業の費用が縮小してしまいます。公益目的事業の費用は、遊休財産額の保有制限を判定する上で、保有上限値の基礎となる数値であるので、公益目的事業の費用が縮小することによって遊休財産額の制限超過に繋がる結果となります。
B特定費用準備資金や資産取得資金の目的外取崩しを行い、流動資産等が増加したとき。通常は、特定費用準備資金や資産取得資金の取崩しは、充当すべき費用又は資産購入代金があるのですが、目的外取崩しを行った際は、流動資産等の増加により、遊休財産額の増加につながってしまいます。

 

 遊休財産額の保有制限を超過するときに、考えられる対策は2つに大別できます。1つは、使途が特定された固定資産(控除対象財産)を増やすことによって使途が不特定な財産を減らす方策です。具体的には、次の@〜Cが考えられます。
@特定費用準備資金を活用する方法
A資産取得資金を活用する方法
B公益目的保有財産又は収益事業供用財産を購入又は積立する方法
C@〜B以外であって指定正味財産として寄附者又は交付者の定めた使途に従って使用若しくは保有し、又はその使途に充てるために保有する特定資産等の設定

 

 もう1つは、会計面において負債を適正に追加計上することによって、相対的に遊休財産額を減少させるものです。これは、遊休財産額の算定式が総資産から負債、基金と控除対象財産を控除し対応負債を加算するものとなっていることから採用が可能なものです。具体的には、次の@Aが考えられます。
@退職給付規程の新設等による引当金の創設
A消費税の未払計上の実施

 

 これらの諸対策は、すべて収支相償の不適合対策と重複しているので、収支相償の不適合と遊休財産額の制限超過の両方が同時に起こったときは、一元的に対策を立案することが望ましいと考えられます。