[2]F 共通費用の配賦処理
以上の@からEまでの手順によって、各々の費用科目の総額が確定したこととなります。
ここからは、「公益目的事業会計」「収益事業等会計」「法人会計」など各会計区分別の損益を計算していくことになります。
共通費用の配賦
例えば「給料手当」の総額が600万円であり、うち300万円が公益目的事業の専属職員の給料手当であるので公益目的事業会計に計上されており、100万円は収益事業等の専属職員の給料手当であるので収益事業等会計に計上されている場合、残額200万円は事業部門にも管理部門にも共通で従事した職員の分であることがあります。この200万円を、期中はまとめて法人会計の管理費に一括計上されていることがあります。
原則として、このような金額は各会計区分に規則的に配賦しなければなりません、公益実施費用額と収益等実施費用額とに関連する費用額、及びこれらと管理運営費用額とに関連する費用額は、適正な基準によりそれぞれの費用額に配賦しなければならない(認定法施行規則第19条)とされていますから、共通費用(この場合は法人会計に計上された給料手当200万円)は、次のとおり配賦仕訳を計上して正しい会計区分に計上しなおす必要があります。
この仕訳は、共通費用が計上されているすべての勘定科目について行います。
【仕訳例:事務局職員の給料手当200万円が法人会計に一括計上されており、これを各事業別に配賦する。ただし従事割合は公益目的事業60%、収益事業等30%、管理業務10%である。】
(公益目的事業会計)
(借)給料手当1,200,000/(貸)他会計短期借入金1,200,000
(収益事業等会計)
(借)給料手当600,000/(貸)他会計短期借入金600,000
(法人会計)
(借)給料手当200,000/(貸)他会計短期貸付金200,000
(借)他会計短期貸付金2,000,000/(貸)給料手当2,000,000
上記仕訳に記載した「他会計短期借入金」「他会計短期貸付金」という勘定科目は、「公益目的事業会計」「収益事業等会計」「法人会計」という名称の勘定科目を使うこともあります。これらは、内部取引の勘定科目であり、貸借対照表内訳表を作成したときは「内部取引消去」欄で消去されて、合計が常にゼロになります。
収益の計上区分見直し
経常収益にも会計区分が適正でない事業収益や寄附金等が計上されていることがあります。これは、公益社団・財団法人において、事業として公益目的事業しか行わない法人にあっては、法人の管理費も広い意味で公益目的事業を行うためのものと評価して、必要な財源(公益目的事業の対価収入又は寄附金)を直接法人会計の収益に計上できることとされているためです(FAQY−1−B)。この場合、法人会計の不足額に次のとおり充当できます。
【仕訳例:公益目的事業しか行わない法人において、公益目的事業に計上されている事業収益のうち、一部の金額を法人会計の収益として計上します。】
(公益目的事業会計)(借)事業収益×××/(貸)他会計短期借入金×××
(法人会計) (借)他会計短期貸付金×××/(貸)事業収益×××