すっきり解決! 公益法人の総合コンサルタント

T−1 収支相償が不適合となる主な理由

収支相償を満たせなくなる原因は、公益目的事業の収入が費用に比して多いためで、次の原因が考えられます。

 

@事業収益が想定外に多くなったとき
 具体的には、例えばセミナーの受講者や資格試験の受験者が予想を超えて増加したときや、公益目的事業として行う施設貸与の面積増加、健康診断の受診者増加などです。

 

A資産運用収益(利息や配当)によって公益目的事業を運営している法人が、金利の上昇や増配により予想以上の利息や配当が得られたとき
 特に元本を公益目的保有財産として申請し認定されているため、その利息や配当を公益目的事業の収益に計上せざるを得ないケースがあります。

 

B受取会費や寄附金で公益目的事業を運営している法人が、想定外に受取会費や寄附金が増加したとき

 

C収益事業等で予想を超える収益が生じて、公益目的事業への利益の繰入が増加したとき

 

D行政からの補助金で公益目的事業を運営している場合で、事業のコストダウンを進めて、補助金当初申請時の見積費用を想定外に圧縮できたとき

公益目的事業への繰入額の計算プロセス

 収支相償に適合しているかどうかは、事業報告等に係る提出書類の別表A(1)〜(3)を決算後に作成することにより判定されます。

 

 この場合に問題になるのが、意外と公益目的事業への繰入額(会計上の科目は「他会計振替額」)の計算間違いが多いということです。決算時には、行政庁に提出する事業報告等に係る提出書類に先行して決算書(正味財産増減計算書内訳表)を作成するので、収益事業等から公益目的事業への繰入額の適正な計算に十分な注意を払えなくなります。そのため、決算が終了した後で事業報告等に係る提出書類の別表A(1)〜(3)を記載した際に、間違いに気づいて数値を修正することが頻発しがちです。中村コンサルティングオフィスが作成した他会計振替額の算定モデルは、次のとおりです。

 

収益事業

その他事業

解説

経常収益

経常費用

経常増減額

C=A−B

基本財産、特定資産、投資有価証券の評価損益等を含まない。

経常外収益

経常外費用

経常外増減額

F=D−E

 

 

 

当期増減額

G=C+F

指定正味財産の当期増減額は含まない。

管理費相当額

 

(事業費割合を採用する場合の算定式)

管理費×収益事業の事業費/全ての事業の事業費合計

 

管理費×その他事業の事業費/全ての事業の事業費合計

管理費相当額控除後の額

I=G−H

(マイナスは0)

計算結果がマイナスの場合は、当該数値はゼロとする。

50%繰入額

J=I×50

合計額K(     円)を算定する。

残額

L=I−J

 

50%超繰入

繰入限度額の計算

(右記計算)

公益目的事業会計の別表A(2)計算

 

収入

費用

経常収益・費用

 

 

減価償却費控除

 

特定費用準備資金

取崩額

積立※1

資産取得資金

 

取崩額

積立1

公益目的保有財産

売却額

購入額

50%繰入額(K)

 

 

合計

 

 

費用−収入

(M)

 

収益事業の残額から繰入

N=L

(上限M)

 

その他事業の残額から繰入

O=L

(上限M-N)

 

収益事業等の利益の50%超繰入額

 

(J+N)

(J+O)

実際の繰入額※2

下限J、上限Pの範囲で決定

 ※1 特定費用準備資金、資産取得資金の積立額は、当年度において実際に積み立てた額のうち、積立期間の残存年数に応じた上限額までとする。

 ※2 実際の繰入額の決定に当たっては、次の要素を勘案して判断する。

・最低でも収益事業等の利益の50%の額までは、繰入が必要である。

・繰入額を増やすと公益目的事業財産が増加して、法人にとって使途制限がない財産(どのような目的にでも使用できる財産)が、結果的に減少することに留意すべきである。

・一方、法人税法上の収益事業に該当する事業の剰余金については、繰入額を増やした方が、税法上の「みなし寄附金」が増加して課税所得が減少するので有利である。ただし、税法上の繰越欠損金が十分に大きいことにより課税所得がゼロになるときは、みなし寄附金を増加しても課税所得に影響が無いこともあるので留意すべきである。