V−2 指定正味財産として受け入れる寄附金の設定
公益財団法人で、例えば寄附金の大部分が特定の企業から提供され、これにより事業運営しているような場合には、寄附金は、その使途の指定が無ければ受領した寄附金の全額を一般正味財産増減の部の収益に計上することとなります。
したがって、例えば寄附者によって使途の指定を新設されたり、寄附金の募集要項を変更して、「寄附金の全額を○○事業<の不足額>に充当する」旨の制限を設けた場合は、当該寄附金は受領した時点では指定正味財産を財源とする特定資産になりますから、その後に事業に消費した額と同額が一般正味財産の経常収益に振替られるために、収支相償に適合しやすくなる。
この方法を採用する場合の注意点は次のとおりです。
@過去にさかのぼって寄附金の拠出目的を変更することは不可能です。
A指定正味財産として留保している額が遊休財産の計算上5号財産又は6号財産として控除対象財産になるためには、当該「寄附等の使途記載書類」を、備置き、閲覧に供することが義務付けられていること(認定法施行規則第22条第5項及び第6項)が必要です。
【備置・閲覧書類(寄附等の使途記載書類)の記載事項】
広く一般に募集されたものである場合 |
左記以外の場合 |
・広く一般に募集されたものである旨
・募集の期間 ・受け入れた財産の額※1の合計額 ・募集の方法 ・募集に係る財産の使途として定めた内容 ・金銭以外のものがある場合には、当該金銭以外の財産の内容 |
・当該財産を交付した者の個人又は法人その他の団体の別※2 ・当該財産を受け入れることとなった日 ・受け入れた財産の額※1の合計額
・当該財産を交付した者の定めた使途の内容 ・金銭以外のものがある場合には、当該金銭以外の財産の内容 |
※1 当該財産が金銭以外のものである場合にあっては、当該財産の受け入れた時における価額
※2 当該者が国若しくは地方公共団体又はこれらの機関である場合にあっては、これらの者の名称
なお、次のとおり指定正味財産として区分することが適切か否かに注意する必要があります。(平成27年3月26日 公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について 公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会)
【指定正味財産に区分することが適切なもの】
a)公益目的事業の○○事業に充当してほしい寄附金
b)奨学金事業の奨学金の財源に充当してほしい寄附金
c)公益目的事業のために使ってほしい(具体的な事業が特定できない)寄附金
・改めて寄附者の意思を確認し、使途を明確化できれば指定正味財産になる
(寄付者が既に亡くなっている場合は寄附者の意思を関係者に確認)
・法人の内部規程で、充当先の事業を特定できれば指定正味財産になる
d)指定正味財産の運用益のうち、具体的な使途の制約のあるもの
【指定正味財産に区分することが適切でないもの】
a)公益法人のために使ってほしい寄附金
b)指定正味財産の運用益のうち、具体的な使途の制約のないもの