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財務三基準が未達となった場合の対策

 公益社団・財団法人は、収支相償、遊休財産額、公益目的事業比率の3種類の財務基準を毎年度クリアしていくことが義務付けられています。これらの基準のうち、とくに収支相償を満たせない法人は数多く存在しており、毎事業年度終了後3箇月以内に行政庁へ提出する「事業報告等に係る提出書類」を作成する上で大きな問題になっています。
 実際に決算を進める中で財務基準不適合が明らかになった場合、認定取消やむなしと考えてしまうのではなく、どのような対策を取りうるのか的確に理解した上で対応が望まれます。
 とくに収支相償の不適合については、会計面を中心とした法人運営上における実践的な工夫により、ある程度解消する手法は存在しています。加えて、収支相償規制と遊休財産額の保有制限規制の2つの制度は相互に密接に関わり合い、1つの対策が両方に影響を及ぼしています。

収支相償が未達となった場合の対策記事一覧

T−1 収支相償が不適合となる主な理由

収支相償を満たせなくなる原因は、公益目的事業の収入が費用に比して多いためで、次の原因が考えられます。@事業収益が想定外に多くなったとき 具体的には、例えばセミナーの受講者や資格試験の受験者が予想を超えて増加したときや、公益目的事業として行う施設貸与の面積増加、健康診断の受診者増加などです。A資産運用...

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T−2 収支相償が不適合でも認められる限度

 収支相償を満たせなかった法人のうち、相当数が公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じている剰余金を、翌年度に繰り延べる方法を採用していると思われます。この方法を採用する場合の注意点は、次のとおりとなります。@事業報告等に係る提出書類 別表A(1)に、公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で剰余...

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T−3 収支相償を満たさないときに考えられる対策

収支相償に適合しないときに、考えられる対策は2つに大別できます。1つは、すでに発生した公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じた剰余金を翌年度以後に繰り延べて、将来の公益目的事業に使用する方策です。具体的には、次の方策があります。@剰余金を直接翌事業年度に繰り延べる方法(前掲)A特定費用準備資金...

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U−1 特定費用準備資金を活用する方法

 「特定費用準備資金を活用する方法」とは、公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じた剰余金を、将来実施する事業のため、特定費用準備資金を設けて、翌事業年度以後に繰り越すことができるというものです。この方法を採用する場合の注意点は、次のとおりとなります。@理事会等の決議により、特定費用準備資金の取...

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U−2 資産取得資金を活用する方法

 「資産取得資金を活用する方法」とは、公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じた剰余金を、将来行なう公益目的事業の設備投資のための資産取得資金を設けることにより、収支相償の第2段階の計算上、資産取得資金積立額を費用として計上する方法です。この方法を採用する場合の注意点は、次のとおりとなります。@...

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U−3 公益目的保有財産(現物資産)を購入する方法

 公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じた剰余金のうち、当該決算年度において公益目的事業の設備投資のため支出した金額は、収支相償の第2段階の計算上、費用として認められます。この方法を採用する場合の注意点は、次のとおりとなります。@当該年度中に資産を購入しなければなりませんので決算によって公益目...

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U−4 公益目的保有財産(金融資産)を積立てる方法

 公益目的事業会計の当期経常増減額の計算で生じた剰余金のうち、当該決算年度において公益目的事業に運用益を使用する長期保有財産のため積立てた金額が、収支相償の第2段階の計算上費用として認めらるのは、ごく限られた場合になりました。次の4条件を満たす必要があります。(1)事業拡大に関して、実物資産ではなく...

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V−1 会費規程等の見直しによる会費及び入会金の充当先(事業区分)の変更

 公益社団法人の社員が支払う会費及び入会金は、一般社団・財団法人法第27条に規定する経費に該当するため、会費規程等において使途を指定していれば当該使途に、使途の指定が無ければ50%を公益目的事業会計の収益に計上することとなります(認定規則第26条第1号)。 例えば会費規程等を見直して会費及び入会金の...

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V−2 指定正味財産として受け入れる寄附金の設定

 公益財団法人で、例えば寄附金の大部分が特定の企業から提供され、これにより事業運営しているような場合には、寄附金は、その使途の指定が無ければ受領した寄附金の全額を一般正味財産増減の部の収益に計上することとなります。 したがって、例えば寄附者によって使途の指定を新設されたり、寄附金の募集要項を変更して...

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V−3 退職給付規程の新設等による引当金の創設

 平成20年基準の公益法人会計基準を適用している法人は、退職給付会計を適用することが義務付けられています。 仮に事実上退職金を支払っていても、退職金規程を設けていないときは、退職給付引当金及び退職給付費用を計上できません。このため、退職金規程を適正に整備して退職給付費用を計上することにより、公益目的...

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V−4 消費税等の未払計上の実施

 消費税及び地方消費税については、法人税法上において、原則として申告書を提出した事業年度でも、納付税額を未払計上した事業年度でも損金に算入することが認められています。 このため、公益目的事業会計に消費税の課税売上に該当する取引が含まれているときは、会計上においても当年度分を未払計上することによって収...

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V−5 複数の公益目的事業の事業区分の統合

 移行認定を申請した法人の中には、公益目的事業の事業区分を細分化しすぎている法人があります。このような法人は、会計処理も煩雑になり、できるだけ同一の目的のために行っている複数の公益目的事業については、まとめて1つの事業に統合する方向で検討したほうがよいでしょう。 これによって、個別の事業では収支相償...

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V−6 公益目的事業の対価の引き下げ

 最終的な方策ですが、公益目的事業の拡大による恩恵をいっそう多くの受益者に享受して頂くよう、公益目的事業の対価(参加費や受講料など)を引き下げる方法もあります。しかしながら、収益源の縮小は法人の財務基盤を弱める可能性もあるので、慎重な判断の上行うこととなります。

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